海洋由来の石灰質土壌

地質学的観点から見ると、シャブリのブドウ畑はパリ盆地を縁取るベルト上にあります。このベルト地帯はロワール渓谷の端からシャンパーニュ地方の南へ、ブルゴーニュ地方の北を通過しながら弧を描くもので、その後は英国の南へ向かいます。

 

シャブリは堆積盆地のブドウ畑。その基盤となる石灰質は暖かい海で形成され、炭酸塩を豊富に含み、かつてこの低地を覆っていました。この低地に少しずつ堆積物が溜まって形成されたのが、現在のシャブリに広がるブドウ畑の表土と心土です。

 

ブルゴーニュ地方の北部に位置するこのブドウ栽培地には、実はジュラ紀の異なる時期に形成された二種類の土壌がみられます。キンメリジャンと、これより新しいポートランディアン(別名チトニアン)です。

 

アペラシオンプティ・シャブリは主に丘の上部や台地にあるポートランディアン期の土壌に位置し、シャブリシャブリ・プルミエ・クリュシャブリ・グラン・クリュなど丘陵地帯に拓かれた他のアペラシオンの栽培地はその大半がキンメリジャンの土壌です。
 


 

海洋由来の石灰質土壌

キンメリジャン

キンメリジャン

今から1億5千万年以上前、キンメリジャン期にこの地を満たしていた暖かい海は海面が低く、炭酸塩を含む堆積物と陸地の侵食による粘土などの流入物がよく混ざり合いました。キンメリジャン期の土壌に泥灰土やエグゾジラ・ヴィルギュラ(Exogyra Virgula)と呼ばれる微小なカキ殻の化石が含まれているのはこのためです。

 

シャブリのワインは、そこかしこに顔を覗かせるこの特別な心土の中から、その個性や純度、繊細さ、そしてミネラル感を引き出しているのです。

 

ジャック・ファネはその著書『Les terroirs du vin(仮訳:ワインのテロワール)』(アシェット社刊)に「シャブリワインのブドウ畑が讃える唯一神、それがキンメリジャンだ」と記しています。

ポートランディアン

ポートランディアン期(1億3500万年前。最近ではチトニアンと称される)になると、海面が大きく上昇して陸地の侵食による流入物は減り、その結果として形成される石灰質の硬度が増します。

 

今から4千万年前、アルプス山脈が隆起してこの地の景観が形作られました。ポートランディアンの硬い石灰質はひび割れ、一方比較的柔らかいキンメリジャンの石灰を含む泥灰土は隆起の力を吸収します。


続いて柔らかい土壌が侵食されるにつれて、シャブリの起伏ある地形が時間の経過とともに形成されていきます。
 

ポートランディアン

英語風の響きを持つ心土

ご存知ですか? キンメリジャンという名称は英国南部、ドーセットにある小さなキンメリッジ村に由来します。ここでキンメリジャン階が定義されました。
同様に、ポートランディアンという名称は英国のポートランド島からきています。
これら2つの地質階を識別したのはフランスの地質学者、アルシド・ドルビニ。彼はここ英国南西部で調査活動を行っていたのです。